親が施設に入ったら実家はどうする?最初の1か月でやること

いまの段階1. 準備する(親が施設に入った・空き家になった)

この記事の結論

  • 最初の1か月は「郵便」「契約(電気・ガス・水道・電話)」「空き家の管理」の3つを先に整えます。片付けや売却は、その後で大丈夫です。
  • 空き家になると、火災保険の条件が変わる場合があります。保険証券を探して、契約先に確認しておきましょう。
  • 家を売るには、持ち主である親本人の判断能力が大切です。迷ったら、早めに家族で話し合い、必要に応じて専門家に相談します。

今日やること実家の郵便受けを確認し、転居届(郵便の転送)をどうするか家族で決める

親が介護施設や高齢者向けの住まいに移ると、実家は急に「誰も住んでいない家」になります。入所の手続きで手一杯のうちに、郵便物がたまり、家の中の空気がこもり始めます。

この記事では、親が施設に入ってから最初の1か月でやることを、時系列で整理します。家を売るか残すかを急いで決める必要はありません。まずは「家を傷めない」「トラブルを起こさない」ための準備から始めましょう。

最初の1か月でやることを時系列で見る

やることは多く見えますが、順番を決めれば一つずつ片付きます。おおまかには、1週目に郵便と契約、2〜3週目に空き家の管理と保険、4週目に家族会議という流れです。

1週 郵便と契約を整える □ 郵便の転居届 □ 電気・ガス・水道・電話の契約先を確認 2週 空き家の管理を始める □ 換気・通水 □ 戸締まり・窓の点検 □ 冷蔵庫の中身を片付ける 3週 保険と大事な書類を確認する □ 火災保険の証券 □ 権利証・通帳・年金の書類の場所 4週 家族会議を開く □ 管理の担当と費用 □ 家の今後(親の希望も確認)
最初の1か月のチェック図(一般的な進め方の目安)

この順番は目安です。親の入所が急だった場合や、実家が遠い場合は、できるところから進めてください。大切なのは「何が終わっていて、何が残っているか」を家族で共有することです。

いまやることを3問で診断する

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1週目:郵便物の転送を手配する

空き家になって最初に困るのが郵便物です。年金や保険、役所からの大事なお知らせが実家に届き続けるうえ、郵便受けがあふれると「誰も住んでいない家」だと外から分かってしまいます。

日本郵便の転居届のポイント

日本郵便に「転居届」を出すと、旧住所あての郵便物を新しい住所へ転送してもらえます。届け出は、郵便局の窓口、ポストへの投函、インターネットの「e転居」のいずれかでできます。

項目内容
転送される期間届け出た日から1年間(転送開始希望日からではありません)。続けたい場合は、もう一度転居届を出します
登録までの日数届け出てから登録まで3〜7営業日かかります
窓口で出す場合出す人の本人確認書類に加えて、転居する人のうち1名の本人確認書類(出す人と転居する人が違う場合は写しでも可)が必要です
転送されないもの「転送不要」と書かれた郵便物は、転居届を出していても転送されません

転送先は、親が入った施設にするか、手続きを担当する家族の家にするかを決めます。日本郵便のよくある質問では、郵便物を受け取る人が住んでいない所を転送先にした転居届は出せないと案内されています。家族の家に送ってもらいたい場合は、届け出の前に郵便局で確認しましょう。

注意

銀行やカード会社、役所からの書類には「転送不要」で届くものがあります。これらは転居届では転送されないため、差出人ごとに住所変更や送付先の変更を申し出る必要があります。どこから郵便が来ているかは、しばらく実家の郵便受けを見て把握するのが確実です。

1週目:電気・ガス・水道・電話をどうするか決める

次に、実家の公共料金や通信の契約を確認します。検針票や引き落としの記録を見れば、どの会社と契約しているかが分かります。止めるか続けるかは、「これから家に通うかどうか」で決めるのが基本です。

契約続ける場合の考え方止める場合の注意
電気片付けや換気で通うなら、照明や掃除機に使うので残すと便利です冷蔵庫の中身を先に片付けておきます
ガス人が住まないなら、使う場面は少なめです停止や再開の方法は契約先に確認します
水道通水(水を流すこと)で排水管の臭いや詰まりを防げるので、管理に通うなら残す選択肢があります寒い地域は凍結に注意。元栓の扱いを確認します
固定電話・ネット使わないなら見直しの対象です親の連絡先として登録している相手がいないか確認します

契約者の名義は親のままのことがほとんどです。手続きに家族が代わりに連絡してよいか、何が必要かは、契約先によって違います。電話の前に、契約者名とお客さま番号が分かる書類を手元に用意しておくと話が早く進みます。

2週目:空き家を傷めない・狙われない管理をする

人が住まない家は、思った以上に早く傷みます。国土交通省は空き家の所有者に向けて、建物の点検、通気・換気、通水、清掃を定期的に行う必要があると呼びかけています。

換気・通水

窓や押し入れを開けて空気を入れかえます。台所・お風呂・トイレの水を流すと、排水管の詰まりや臭いを防げます。

やること通うたびに全部の部屋の窓を開ける

点検・清掃

雨漏りの跡、窓の割れ、庭木のはみ出しを見ます。郵便物やチラシがたまっていないかも確認します。

やること気づいたことをメモして家族で共有する

防犯

草木が伸びて死角が増えたり、郵便物があふれたりすると、留守が外から分かりやすくなります。

やること戸締まりを確認し、近所の人に連絡先を伝える

国土交通省の資料では、寒い地域の冬期は給水管の元栓を閉めることや、積雪に応じた雪下ろしも挙げられています。遠方で通うのが難しい場合は、空き家の管理を代行する業者を使う方法もあると紹介されています。

管理の頻度について、国の資料では「定期的に」とされ、具体的な回数は示されていません。家族の住まいとの距離や季節を考えて、「月に1回は誰かが行く」など、続けられるペースを決めましょう。

注意

空き家を管理しないまま放置すると、市区町村から「管理不全空家」として指導や勧告を受けることがあります。勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする特例が外れることがあります。「まだ決められない」場合でも、管理だけは続けましょう。

3週目:火災保険と大事な書類を確認する

空き家になると火災保険の条件が変わることがある

実家にかけている火災保険は、多くの場合「人が住んでいる家」として契約されています。契約内容によっては、住む人がいなくなったことを保険会社に伝える必要があったり、補償の条件や保険料が変わったりする場合があります。

どうなるかは、保険会社や契約の種類によって違います。まず保険証券を探し、契約している保険会社か代理店に「親が施設に入って、家に住む人がいなくなった」と伝えて確認しましょう。地震保険をつけているかどうかも、このとき一緒に見ておくと安心です。

あわせて場所を確認しておく書類

  1. 家に関する書類権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書、火災保険の証券。家の今後を考えるときに必ず使います。
  2. お金に関する書類通帳、キャッシュカード、年金の書類、保険の証券。施設の費用の支払いにも関わります。
  3. 連絡先親の友人、親戚、近所の人、かかりつけ医の連絡先。手帳や年賀状に書かれていることが多いです。

書類は勝手に持ち出さず、どこにあるかを確認して家族で共有するところまでにしておくと、後で「誰が持っていったのか」というもめごとを防げます。親と話せる状態なら、本人に保管場所を聞くのが一番確実です。

家を売るなら「親の判断能力」が大切

親が施設に入ると、「もう戻らないなら、家を売ったほうがいいのでは」という話が出てきます。ただし、家の持ち主は親です。子どもが代わりに売ることは、原則としてできません。

親が自分の意思で判断できるうちは、親本人が売主として契約します。一方、認知症などで判断能力が十分でない場合は、本人が契約を結ぶことが難しくなります。そのときに使われる仕組みが「成年後見制度」です。

実家を売りたい 持ち主は親本人 親が自分で判断できる 本人の意思を確認しながら進める 判断能力が十分でない 本人が契約を結ぶのは難しい 親本人が売主として契約 家族で話し合い、希望を聞いておく 家庭裁判所が後見人等を選ぶ 住まいだった家を売るには 家庭裁判所の許可が必要
親の判断能力と家の売却(制度の概要。個別の判断は専門家へ)

成年後見制度の概要

成年後見制度は、判断能力が不十分な人を法律の面で支える仕組みです。すでに判断能力が低下している人のための「法定後見」と、元気なうちに自分で支援する人を選んでおく「任意後見」があります。

種類対象となる人支援する人
補助判断能力が不十分な人補助人
保佐判断能力が著しく不十分な人保佐人
後見判断能力が欠けているのが通常の状態の人成年後見人
任意後見十分な判断能力があるうちに契約しておく人本人が選んだ任意後見人(契約は公正証書で結びます)

後見開始の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に行います。申し立てられるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長などです。申立手数料は収入印紙800円分、登記手数料は収入印紙2,600円分で、ほかに郵便切手が必要です。また、本人の精神の状況について鑑定が必要になり、その費用を申立人が負担する場合もあります。

知っておきたい3つのこと

  1. 家族が選ばれるとは限らない申立書に候補者を書いても、必ずその人が選ばれるわけではありません。弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもあり、希望と違ったことを理由に不服を申し立てることはできません。
  2. 途中でやめられない手続きは、申し立てのきっかけになった問題(家の売却など)が終わっても続きます。本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続き、家族の都合ではやめられません。
  3. 住まいだった家の売却には許可が必要後見人等が本人に代わって、本人が住んでいた家(施設に入る前に住んでいた家を含む)を売ったり、貸したり、取り壊したりするには、家庭裁判所の許可が必要です。許可なく処分すると無効になると案内されています。

注意

成年後見制度を使うかどうかは、家の売却だけでなく、親のお金の管理や生活全体に関わる大きな判断です。親の状態がどの類型にあたるか、制度を使うべきかは、家庭裁判所の手続案内や、弁護士・司法書士、地域の相談窓口に確認してください。

4週目:家族会議で「誰が・何を・いつまで」を決める

1か月の終わりには、ここまでで分かったことを持ち寄って家族会議を開きます。家の今後をすぐに決める必要はありませんが、「当面の管理をどうするか」は決めておきましょう。

話し合うこと決めておく内容の例
管理の担当誰が、どのくらいの間隔で実家に行くか。行けない人は費用で協力するか
お金光熱費・固定資産税・保険料を、親のお金から払うか、家族で分けるか。記録の付け方
書類と鍵大事な書類と鍵を誰が預かるか
家の今後親の希望はどうか。売る・貸す・残すのどれを考えるか、いつまでに決めるか

親と話せる状態なら、会議の前に「家や持ち物をどうしたいか」を本人に聞いておくのが一番の準備です。施設に入ったばかりの親は、気持ちが揺れていることもあります。結論を迫らず、希望を聞くところから始めましょう。

決めたことは、メモやメッセージで全員に共有しておきます。片付けを始めるときの進め方は「実家の片付けは何から?自分でやる手順と、つまずかないコツ」で詳しく説明しています。

よくある質問

郵便の転送は、親が施設に入ったらすぐ手続きすべきですか?

早めに考えるのがおすすめです。転送の登録には3〜7営業日かかり、転送期間は届け出た日から1年間です。転送先を施設にするか家族の家にするかは、郵便局で確認しながら決めると安心です。

電気や水道は、全部止めたほうが節約になりますか?

使わなければ節約にはなりますが、片付けや換気で通うなら電気と水道は残すと便利です。水を流す「通水」は排水管の臭いや詰まりを防ぐのに役立ちます。寒い地域では凍結対策もあわせて考えましょう。

親が「家は売らない」と言っています。どうすればいいですか?

家の持ち主は親なので、本人の意思が尊重されます。すぐに結論を出さず、当面は空き家として管理を続けながら、親の気持ちを聞く機会を何度か持つのが一般的です。

親が認知症と診断されました。家は売れなくなりますか?

診断があるだけで決まるわけではなく、判断能力の程度によります。判断能力が十分でない場合は、成年後見制度を使い、後見人等が家庭裁判所の許可を得て売却する流れになります。具体的には家庭裁判所や専門家に相談してください。

実家が遠く、毎月通うのは無理です。

国土交通省の資料でも、遠方に住んでいる場合などは空き家管理業者の利用が紹介されています。近所の人や親戚に、何かあったときの連絡先を伝えておくだけでも安心につながります。

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実家じまいの全体の流れを確認する

空き家の管理が落ち着いたら、片付け・家をどうするかの判断・手続きへと進みます。全体の流れを一度見ておきましょう。

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